がん幹細胞研究

がんの上皮間葉転換研究 

膵がん幹細胞が含まれているスフェア

上皮間葉転換をおこした膵癌細胞(PK-8)

拡大

 人体を構成する細胞には皮膚と連続し外気と接している上皮細胞と、それ以外の骨、軟骨、血管などの間葉系細胞(非上皮細胞)が存在します。上皮細胞と間葉系細胞はそれぞれが分化した細胞で、お互いの細胞に変化することはないと考えられてきました。しかし近年、胎児の発生段階や、創傷治癒の過程で上皮細胞が間葉系細胞のような形態と性質に変化することがあることが解明され、「上皮間葉転換(じょうひかんようてんかん)」と呼ばれています。上皮間葉転換を起こした細胞は紡錘形となり、周囲の細胞との接着性が低下し移動しやすくなります。さらに、上皮細胞に発現するE-カドヘリンなどのタンパクが減少し、間葉系細胞に発現するビメンチン、フィブロネクチンなどのタンパクが増加します。
近年、がん細胞も上皮間葉転換をおこすことが明らかとなり、がんの転移や再発に重要な役割を果たしていることが報告されています。特にもともと移動能が高いがん幹細胞が、上皮間葉転換をおこすことで転移がおこりやすくなるのではないかと考えられます。私たちは現在、がん幹細胞を含むがん細胞の上皮間葉転換を抑制することが新たな治療法となる可能性があると考え、研究を進めています。

 

論文業績紹介

 

正常細胞とがん細胞における線維芽細胞増殖因子受容体-(FGFR-2)の選択的スプライシングの役割について(総説)

Ishiwata T. Role of fibroblast growth factor receptor-2 splicing in normal and cancer cells. Front Biosci (Landmark Ed). 2018 Jan 1;23:626-639. Review. PubMedPMID: 28930565.

高齢者がんを含むさまざまながん細胞には1型から4型の線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR-1~4)が発現しています。なかでもFGFR-2は発がんやがんの進展に重要な役割を果たしていることが報告されており、がんの新たな治療標的として注目されています。FGFR-2は膜貫通型の増殖因子受容体で、細胞外ドメインの選択的スプライシングによりIIIbIIIcのバリアントが存在しています。FGFR-2 IIIbは口腔、食道、胃、大腸、膵臓、肺、乳腺、子宮、前立腺などの上皮細胞に、主に発現しています。一方、FGFR-2 IIIcは間葉系細胞や上皮間葉転換(EMT)をおこした細胞に発現することが報告されています。FGFR-2 IIIbIIIcに結合する線維芽細胞増殖因子(FGF)の種類が違うことから、がん細胞への作用も変化すると考えられています。近年の研究で、FGFR-2 IIIbからIIIcへの変換が、がんのEMTに伴う悪性度の増加と関連していることが報告されています。この総説では、がん細胞におけるIIIbIIIcバリアントの発現と役割、制御機構とEMTの関連について紹介しています。

 

 

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