高齢者がん・その他の研究

食道・口腔がんの研究 

論文業績紹介

欧米で高度異形成(前がん病変)と生検診断されても浸潤癌である可能性があります

Sakurai U, Lauwers GY, Vieth M, Sawabe M, Arai T, Yoshida T, Aida J, Takubo K. Gastric high-grade dysplasia can be associated with submucosal invasion: evaluation of its prevalence in a series of 121 endoscopically resected specimens. Am J Surg Pathol 2014; in press.

日本でごく初期の食道がんや胃がんと病理組織診断されている病変は、欧米ではがんではなく、高度異形成や軽度異形成(いずれも前癌病変)と診断されています。この診断基準に差のあることは、日本人病理医や消化器科医、また最近では米国の医師の間に広く知られています。日本の診断基準は、がんが浸潤する前に早期に診断し早期治療を受けることができる点で患者にとって優れています。しかし、この点について米国の医師を説得できていませんでした。「がんだからがん」と説明なしに主張するだけだったからです。また、日本人の主張を強く書いた論文はまれでした。本研究グループは日本の診断基準が優れていることを4論文(雑誌)と2つの英文著書の中で強く主張して来ました。本論文は米国で最も権威のある外科病理に関する雑誌に採択されました。本論文中で、欧米では高度異形成とされる病変でも、浸潤がんの含まれていることを証明することにより、欧米の医師に、高度異形成はがんと診断すべきであることを説得できると思われます。米国人(ハーバード大学 Lauwers教授)も共同著者になっています。さらに、本論文に対する雑誌巻頭の論説は、共同著者のドイツバイロイトのVieth教授が書くことになっています。 

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高齢女性に多い大腿骨骨折とエストロゲン受容体βの遺伝子多型

Honma N, Mori S, Zhou H, Ikeda S, Mieno MN, Tanaka N, Takubo K, Arai T, Sawabe M, Muramatsu M, Ito H. Association of estrogen receptor-β dinucleotide repeat polymorphism with incidence of femoral fracture. J Bone Miner Metab 2012; in press.

女性ホルモンの代表であるエストロゲンには、骨粗鬆症を予防する働きがあります。骨粗鬆症の症状の中でも最も深刻なのは、寝たきりや要介護状態の原因にもなる大腿骨骨折で、その予防は高齢化が著しい我が国においては社会的にも極めて重要です。エストロゲンの受容体(受け手)のうち、エストロゲン受容体βは男女を問わず全身に広く分布し、エストロゲンが各臓器で作用を発揮するのに重要な働きをしています。エストロゲン受容体βをつくるもとになっている遺伝子には、シトシン(C)とアデニン(A)が繰り返して出現するDNA配列があり、その繰り返しの回数(CA repeat回数)が人によって異なります。私たちは高齢者剖検例について、生涯の大腿骨骨折の有無と、このCA repeat回数の関係を調べました。その結果、CA repeat回数20回のDNA配列(CA-20)をエストロゲン受容体β遺伝子中にもっている人は、もっていない人と比べ、大腿骨骨折の頻度が約4分の1と低く、特に女性では約6分の1とその傾向が強く現れることがわかりました。この知見を利用すれば、生涯に大腿骨骨折を起こす危険を予測することが可能になります。現在、なぜCA repeat回数が大腿骨骨折と関係するのか、詳しいメカニズムの解明を行なっています。体内のエストロゲン濃度には、肥満度や大豆イソフラボン摂取量など様々なものが影響することが知られています。研究をさらに発展させ、エストロゲンを上手にコントロールすることによる大腿骨骨折予防につなげていければと考えています。

 

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高齢女性大腸がんとエストロゲン

Naoko Honma, Tomio Arai , Kaiyo Takubo, Mamoun Younes, Noriko Tanaka, Makiko N Mieno, Kohei Tamura, Shinobu Ikeda, Motoji Sawabe, Masaaki Muramatsu: Oestrogen receptor-beta CA repeat polymorphism is associated with incidence of colorectal cancer among females. Histopathology 2011; 59: 216-224.

大腸がんは老年期女性に多い代表的ながんで、エストロゲン(女性ホルモン)との関係に興味がもたれます。大腸粘膜にはエストロゲン受容体の一つ、ER-βが発現されていますが、高齢者剖検例につき解析したところ、ER-βの遺伝子多型の一つが、女性の大腸がん頻度に大きく影響していました。現在、通常年齢群についても解析中です。肥満度や、近年話題のイソフラボン等、日常生活の中にもエストロゲンに関連するものは多いので、予防に役立つ研究をと考えています。

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粥状動脈硬化症とミトコンドリアゲノムの遺伝子多型の関連

Motoji Sawabe, Masashi Tanaka, Kouji Chida, Tomio Arai, Yutaka Nishigaki, Noriyuki Fuku, Makiko Naka Mieno, Aya Kuchiba, Noriko Tanaka Mitochondrial haplogroups A and M7a confer a genetic risk for coronary atherosclerosis in the Japanese elderly: An autopsy study of 1,536 patients. J Atheroscler Thromb 2011; 18: 166-175.

高齢者の血管病の代表である粥状動脈硬化症には遺伝的要因があることが分かっています。ミトコンドリアは細胞内小器官であり、エネルギーを産生すると共に、細胞にとって有害な活性酸素を産生します。ミトコンドリアゲノムの個人間のちょっとした違い(遺伝子多型)が、代謝・老化や病気と関連する可能性があります。そこでセンター病理解剖例1536例を用いて、冠動脈硬化症とミトコンドリアゲノム多型の関連を見たところ、ミトコンドリアハプロタイプA, M7aを有している人では,冠動脈硬化症が有意に強い事が分かりました。本研究により、粥状動脈硬化症の遺伝的要因の一部がミトコンドリアゲノム多型で説明できました。今後も粥状動脈硬化症の原因に結びつく遺伝子を同定する研究を行っていきます。

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老年期乳がんのホルモン的特徴

Naoko Honma, Kaiyo Takubo, Motoji Sawabe, Tomio Arai, Futoshi Akiyama, Goi Sakamoto, Toshiaki Utsumi, Noriko Yoshimura, Nobuhiro Harada. Estrogen-metabolizing enzymes in breast cancers from women over the age of 80 years. J Clin Endocrinol Metab 2006; 91:607-613.
Naoko Honma, Rie Horii, Takuji Iwase, Shigehira Saji, Mamoun Younes, Kaiyo Takubo, Masaaki Matsuura, Yoshinori Ito, Futoshi Akiyama, Goi Sakamoto: Clinical importance of estrogen receptor-beta evaluation in breast cancer patients treated with adjuvant tamoxifen therapy. J Clin Oncol 2008; 26:3727-3734.

乳がんの病態上、エストロゲン(女性ホルモン)は重要ですが、卵巣機能の衰えた閉経後は、乳がんに存在する各種酵素がエストロゲンを産生します。究極の閉経後乳がんである高齢者乳がんを集中的に解析したところ、効率良くエストロゲンを産生する酵素パターンが明らかとなりました。またエストロゲン受容体の一つ、ER-β発現状況が、閉経後乳がんの予後に大きく影響することがわかりました。これら老年期乳がんの特徴を踏まえたホルモン療法を提案すべく、研究を展開中です。

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高齢女性の盲腸・上行結腸に集積のみられる髄様型低分化腺がんはミスマッチ修復遺伝子のメチル化により発生する

Tomio Arai, Yukiyoshi Esaki, Motoji Sawabe, Naoko Honma, Ken-ichi Nakamura, Kaiyo Takubo. Hypermethylation of hMLH1 promoter gene with absent hMLH1 expression in medullary-type poorly differentiated colorectal adenocarcinoma in the elderly. Mod Pathol 2004; 17: 172-179.

大腸がんは高齢者に好発するがんです。低分化腺がんは大腸がんの約5%を占めるに過ぎませんが、高齢女性の盲腸・上行結腸に好発します。このタイプのがんの特徴を調べたところ、遺伝子の繰り返し配列が不安定な状態(マイクロサテライト不安定性)を示すことが明らかになりました。その原因は,DNAの傷を修復する遺伝子(ミスマッチ修復遺伝子)の働きをオフにする現象がみられたからでした。一般に低分化腺がんは悪性度が高いといわれていますが、メチル化により発生した高齢者のがんは比較的おとなしいがんであることも明らかになりました。

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