テロメア研究

染色体FISH法による研究 

染色体FISH法について

TIG-1細胞のFISH像

TIG-1細胞のFISH像

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ヒト細胞は46本の染色体を持ちます。染色体の長・短腕ごとのテロメアの長さを測定しようと試みました。老化や疾患の発生と関連して、特有な染色体のテロメアが短いのではないかと考えたからです。特異的にテロメアに結合するプローブに、蛍光物質を付加して利用します。その蛍光光度を測定し、テロメア長に換算して、テロメアの長さを知ることができます。蛍光光度とサザンブロット法のデータをキャリブレーションすることにより、実際のテロメア長を測定することができます。癒合、消失や分裂後期架橋などの染色体の不安定性の形態学的指標を持つ染色体では、テロメアが短いことを明らかにしました。

論文業績紹介

18番染色体トリソミー、21番染色体トリソミー(ダウン症候群)新生児でテロメア短縮は起こっていない

Ken-ichi Nakamura, Naoshi Ishikawa, Naotaka Izumiyama, Junko Aida, Mie Kuroiwa, Naoki Hiraishi, Mutsunori Fujiwara, Atsushi Nakao, Tadashi Kawakami, Steven SS Poon, Masaaki Matsuura, Motoji Sawabe, Tomio Arai, and Kaiyo Takubo. Telomere Lengths at Birth in Trisomy 18 and 21 Measured by Q-FISH. Gene 2013; in press.

21番染色体トリソミーが原因であるダウン症候群は、テロメア短縮による染色体不安定性(染色体癒合や欠失)が誘因となることが強く疑われています。また、早老症を呈することで知られるダウン症候群においてテロメアは正常者と比べ急速に短縮するとの報告がされています。しかしながら、出生直後のテロメア長に関する報告は今迄ありませんでした。今回私達は、核型正常2倍体、18番染色体トリソミーおよび21番染色体トリソミーの3群の新生児の末梢血リンパ球の染色体ごとのテロメア長をQ-FISH法により計測しました。その結果、1)トリソミー責任染色体のテロメアは全染色体平均テロメア長と細胞内で比較して有意差はないこと、2)トリソミー群と二倍体群との群間比較でテロメア長に差は認められないこと、を明らかにしました。また、テロメア長既知の細胞(TIG-1)を検体スライド上に展開して同時に測定することにより、検体のテロメア長の正確な校正値を得る手技を確立しました。以上のことから、短縮テロメアは受精後の発生中のリプログラミングにより補正的に伸長されて正常域にあること、テロメア短縮を来さないように患児を生後管理することの重要性が示唆されました。

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テロメアの短い膀胱癌が組織学的悪性度が高い癌に進行する

Naotaka Izumiyama-Shimomura, Ken-ichi Nakamura, Junko Aida, Naoshi Ishikawa, Mie Kuroiwa, Naoki Hiraishi, Mutsunori Fujiwara, Yuichi Ishikawa, Naoko Inoshita, Junji Yonese, Masaaki Matsuura, , Steven SS Poon, Tomio Arai, Kaiyo Takubo. Short telomeres and chromosome instability prior to histologic malignant progression and cytogenetic aneuploidy in papillary urothelial neoplasms. Urol Oncol 2014; 32: 135-145.

乳頭状に膀胱の中に突出する膀胱癌の悪性度は、組織像(顕微鏡で見た癌組織や細胞の様子)により3種類に分類されています。最も悪性度が低い型は、細胞核内の染色体数は正常と同じく46本でした。これは切除で治ります。悪性度が中間の型は46本未満であることが多く、最も悪性度の高い型は46本よりも多いことがわかりました。この一連の組織像の悪性化と染色体数の変化の過程よりも前に、テロメアの短縮と染色体の不安定性がすでに起きていることを本論文は証明しました。以上の結果から、テロメアが短く染色体の不安定性のある癌は、悪性度の高い癌に早期になることが予想されました。

図:3群の膀胱癌培養細胞中に見られた分裂後期架橋の代表的な像。(A)悪性度の低い型 (B)悪性度が中間の型 (C)悪性度の高い型 糸状の染色体(ストリング: 矢印)にブレブ(★)の形成が見られ、多数の微小核(#)が認められる。

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染色体の癒合はテロメアの短い染色体から始まり分裂後の娘細胞の不分離の原因となる

Kaiyo Takubo, Junko Aida, Naotaka Izumiyama, Naoshi Ishikawa, Mutsunori Fujiwara, Steven SS Poon, Hiroshi Kondo, Makoto Kammori, Masaaki Matsuura, Motoji Sawabe, Tomio Arai, Duncan M Baird, Ken-ichi Nakamura. Chromosomal instability and telomere lengths of each chromosomal arm measured by Q-FISH in human fibroblast strains prior to replicative senescence. Mech Age Dev. 2010; 131: 614-624.

本研究所で作られたヒトの線維芽細胞7株を細胞分裂が停止するまで培養しテロメア長を経時的に染色体別に計測しました。測定には定量的蛍光インサイチューハイブリダイゼイション法を用いました。分裂が止まる直前に出現した癒合した染色体(染色体不安定性の指標)のテロメアは有意に短縮していました。また染色体不分離像である細胞分裂の後期−終期ブリッジ(架橋)の頻度はテロメア短縮と相関し、架橋中にテロメアが過度に短縮した染色体があることを証明しました。テロメア長短縮率、短縮する染色体番号などに細胞株の個性があることを明らかにした点も独創的であり本研究の画期的な点です。

図1


図2

図1:
TIG-1細胞のホールクロモゾームペインティング法による分裂中・後期架橋像。赤はX染色体、緑は21番染色体です。核は完全に分裂せず糸状の核線で繋がっています。繋がった部分にはX染色体と21番染色体とが存在しています。両染色体は定量的FISH法によるテロメア長測定で、テロメアが過度に短縮していました。(Mech Age Dev 2010; 131: 614-624)

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