テロメア研究

サザンブロット法による研究 

サザンブロット法について

サザンブロット法による電気泳動像

サザンブロット法による電気泳動像

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テロメア研究においては、まずその長さを知ることから始めます。テロメアの測定方法はサザンブロット法が標準的測定法です。我々もこの方法でまずテロメア長を測定しました。細胞は分裂に伴いテロメアが約100 bp短縮します。組織のDNAを抽出して測定すれば、老化に伴うテロメアの短縮が明らかになると考えました。測定した人体の組織の種類はおよそ20種類になります。サザンブロット法によるテロメア長の測定により、組織内のテロメアは非常に長さに差の大きいことがわかりました。この項ではその結果をまとめた論文のうち、特に重要な論文がアップされています。

論文業績紹介

ヒト心筋細胞のテロメア長は加齢と心疾患で短縮する

Masanori Terai, Naotaka Izumiyama-Shimomura, Junko Aida, Naoshi Ishikawa, Motoji Sawabe, Tomio Arai, Mutsunori Fujiwara, Akio Ishii, Ken-Ichi Nakamura, & Kaiyo Takubo. Association of telomere shortening in myocardium with heart weight gain and cause of death. Scientific Reports 2013; 3: srep02401, http://www.nature.com/srep/2013/130809/srep02401/full/srep02401.html

病理解剖を行った530人の患者様から心臓の壁の筋肉(心筋)のDNAを抽出し、サザンブロット法を用いてテロメア長を測定した結果、心筋のテロメアは加齢によって短縮することを証明しました。さらに、テロメア長のデータを死因別(がん、心疾患、それ以外の疾患)に比較した結果、死因が心疾患の患者様の心重量は、がんやそれ以外の疾患の患者様と比較して増加していました。さらに、死因が心疾患である患者様の心筋のテロメアはがんの患者様と比較すると短縮していました。以上の結果をまとめると、(1)加齢に伴い心筋のテロメアは短縮すること、(2)心疾患により心臓の重量は増加すること、(3)死因が心疾患の心筋のテロメアは、がんと比較して短縮していることが判明しました。 今回の論文の注目点は、心疾患における心重量の増加とテロメアの短縮との関連です。高血圧など心臓に対して負荷がかかると心筋細胞の肥大がおこることは良く知られていますが、それ以外にも、従来から存在が指摘されていた心筋の組織幹細胞が活性化する可能性や、すでに分化していて分裂しない細胞といわれてきた心筋細胞が分裂する可能性も推察されました。テロメアの生物学により、心筋細胞の肥大、組織幹細胞を含めた心筋細胞の再生の機構が解明され、将来的にはiPS細胞や間葉系幹細胞などにを用いた細胞移植医療による心疾患の治療や、予防法の確立などの研究の進展に大きく貢献できると確信しています。

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ヒト下垂体テロメア長は百寿者に至るまでよく保存される

Naoshi Ishikawa, Ken-Ichi Nakamura, Naotaka Izumiyama, Junko Aida, Motoji Sawabe, Tomio Arai, Hiroshi Kishimoto,  Mutsunori Fujiwara, Akio Ishii, and Kaiyo Takubo. Telomere length dynamics in the human pituitary gland: robust preservation throughout adult life to centenarian age. AGE 2012; 34: 795-804

病理解剖された患者様(0〜100歳)から得られた下垂体のテロメア長をサザンブロット法で検出し、加齢に伴うテロメアの変化を解析しました。その結果、下垂体のテロメアは新生児期では諸臓器中で最も長く、年間短縮率も他臓器と比べ(大脳灰白質を除き)最も小さいことがわかりました。つまり、他の臓器と比較して生涯を通じて最も長いテロメアを持っていることを明らかにしました。テロメアの短縮は新生児期から60歳までの間に起こりその後は有意な減少は起こらないこと(むしろ高齢者ほど長くなる傾向を示す)、細胞の増殖期のマーカーであるKi-67が陽性である細胞は、胎児期から新生児期にかぎられることもわかりました。以上から、下垂体でのテロメア短縮は生後早期のうちに起こることが推測され、個体特有のテロメア長の指標として有用であると考えられます。また、細胞内や染色体内で差の大きなテロメアの長さの代表値について検討し、サザンブロット法によるシグナル強度のピーク値と中央値(median)がよく相関すること、平均値(mean)は、ほぼ一定の幅で中央値(median)より大となるため、両者それぞれから求めた年間短縮率はほぼ同じになることを明らかにしました。これらのデータはこれ迄に世界中の研究室で蓄積されたテロメア長データを比較するうえで重要な基礎データを提供することになります。

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ウェルナー症候群の患者の皮膚でテロメア短縮が加速している

Naoshi Ishikawa, Ken-ichi Nakamura, Naotaka Izumiyama-Shimomura, Junko Aida, Akio Ishii, Makoto Goto, Yuichi Ishikawa, Reimi Asaka, Masaaki Matsuura, Atsushi Hatamochi, Mie Kuroiwa, Kaiyo Takubo. Accelerated in vivo epidermal telomere loss in Werner syndrome. Aging 2011; 3: 417-429

ウェルナー症候群(WS)はウェルナーヘリカーゼ遺伝子の変異により発症する疾患です。思春期以降に加齢と関係する症状(白髪、皮膚の萎縮、動脈硬化、骨粗鬆症など)を通常よりも若い年齢から発症します。代表的な早老症で、老化のメカニズムを解明するモデルとして注目されてきました。難治性の潰瘍のため手術された患者皮膚および骨格筋のテロメア長をSouthern blot法により測定し、コントロール群との関係を解析しました。WS患者皮膚組織において、30歳代以降、正常人群と比べテロメア長が急速に短縮(25歳相当早まる)すること、一方骨格筋組織では出生早期からテロメア長が有意に短縮していることを明らかにしました。これはWS患者の生体内(in vivo)でのテロメア長動態について世界初の報告で、テロメア維持機構の破綻がWS発症の基盤の一つとなることを強く示唆します。WS患者における若年での肉腫の発症や中年以降の癌腫の多発とテロメア短縮との関連を初めて統計学的に示したことも注目されます。

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テロメアの長さは全ての組織で個人特有の長さを持つ

Kaiyo Takubo, Naotaka Izumiyama-Shimomura, Naoko Honma, Motoji Sawabe, Tomio Arai, Motonobu Kato M, Mitsuo Oshimura, Ken-ichi Nakamura. Telomere lengths are characteristic in each human individual. Exp Gerontol. 2003; 37: 523-531.

ヒト組織は細胞から構成され、細胞核内の染色体の末端には、命の回数券と呼ばれるテロメアがあります。各組織のテロメアは、一つの組織で長い時、他の組織でも長いことをこの論文で証明しました。長いテロメアは染色体を安定に保つことに必須で、染色体の不安定性が「がん」への入り口と考えられます。以上からはテロメアの長いヒトは「がん」にかかりにくいことが考えられます。テロメアを測定することにより、がん化のリスクを判定できるようになるかもしれません。

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脳のテロメア長は死因と関連している

Ken-Ichi Nakamura, Kaiyo Takubo, Naotaka Izumiyama-Shimomura, Motoji Sawabe, Tomio Arai, Hiroshi Kishimoto, Mutsunori Fujiwara, Motonobu Kato, Mitsuo Oshimura, Akio Ishii and Naoshi Ishikawa. Telomeric DNA length in cerebral gray and white matter is associated with longevity in individuals aged 70 years or older. Exp Gerontol, 2007; 42: 944-950

大脳は神経細胞を含む灰白質と神経細胞を含まない白質とからなっています。生後神経細胞はほとんど分裂しないことから、灰白質のテロメアは誕生時の長さを白質よりも維持していると考えられています。両者のテロメア長を測定し、死因との関係を解析すると、がん死はテロメアの短い群に多いことがわかりました。ヒトの組織を用いて死因との関係を検討した論文として老化に関する英文総説の中で半ページも引用されるなど、高い評価を受けました。

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